去る2月27日に開催されました総会等についてご報告致します。
総会
1.参加相談医
高知大学医学部皮膚科学講座 佐野栄紀教授
〃 樽谷勝仁准教授
2.参加人数 27名 うち既会員10名 新規会員4名 一般13名
3.22年度活動報告、決算報告満場一致で承認 監査報告終了
4.23年度活動計画、予算計画満場一致で承認
5.規約変更満場一致で承認
※会計年度の変更 23年度は23.1.1~24.3.31の15カ月間とし、以降は
4月1日~3月31日とする
平成23年第1回とさあいの会
1.講演「乾癬について最近分かってきた事」
高知大学医学部 附属病院 中島喜美子講師
・乾癬は病因がはっきりせず、以前は研究するのが難しい疾患と考えられていた。
・顕微鏡で見ると、乾癬の病変は表皮の肥厚と真皮にリンパ球が集まる所見が観察できるが、これが病態として重要であることがわかってきた。
・当科の佐野栄紀教授は、2005年に「Nature Medicine」という研究誌に乾癬の病態には皮膚表皮のシグナル分子であるStat3の活性化が関与していることを発表された。
・このStat3が表皮特異的に活性化しているモデルマウスは乾癬モデルマウスとして非常に有用であり、現在当教室ではこのマウスを用いて乾癬の研究を行っている。その一端として、IL-23/Th17軸が病態に関与していることを証明した実験データーを簡単に紹介した。
・また関節症性乾癬のモデルマウスは世界中に存在しなかったが、当科の山本先生が作成し、病態の解明と治療について研究している。
・乾癬の治療薬の新たな選択肢として昨年生物学的製剤が承認されたが、今春には新しい生物学的製剤が発売される。我々はそれに先がけて、このモデルマウスにおける生物学的製剤の効果について発表した。
・さらに当科では乾癬の治療薬としてスタット3の活性化を抑える「STA21軟膏」の有効性を確認した。また植物から抽出された生薬である「インディビル軟膏」は動物実験では効果があることがわかり、今後臨床治験を行う予定である。このように病気の研究には患者さんに力を貸していただきたいことが多くあるので、主旨をご理解いただき協力していただけると大変有り難い。
・当科では光線療法としてナローバンドUVB照射療法を行っている。中でも「エキシマ」は、エネルギー量が高く深部まで光線が届く。エキシマによる治療によって難治性である下腿の乾癬病変、爪乾癬は有効であった。
・当科は、佐野教授のご指導のもと、優れた乾癬モデルマウスを持ち、地方大学ではあるが日本で一番乾癬を研究している。これからも研究を続けていき、乾癬の病態を明らかにし、さらによい治療法を開発していきたい。

2.会員質問に対する回答
Q ビタミンD3軟膏の種類と効果を教えて下さい。
A この軟膏には、オキサロール、ドボネックス、ボンアルファハイ軟膏がある。オキサロールはどこにでも塗れるが、ドボネックスは刺激が強く、顔には塗らないほうが良い。ボンアルファハイ軟膏は1日1回塗る。しかしこの3つのどれも1日に塗る上限があり、沢山塗りすぎるとカルシウムが高くなり二日酔い症状のように気分が悪くなるので、たまには血液検査をしながら塗布すること。またもう一つボンアルファ軟膏があるが、こちらは使用制限もない代りに、効果が低い。
Q ビタミンD3軟膏とステロイドを2対1の割合で交互に使用しているが良いか?
A 症状がひどければステロイドを塗り続け、ある程度良くなれば、例えば朝ステロイドを塗り、夕方にD3を塗る。そして良い状態が続けばステロイドは週末だけにし、普段はD3だけにする方法もある。ステロイドからD3の割合を高める治療が一般的である。
Q 薬の副作用は?
A ネオーラルはグレープフルーツジュースと併用すると効き目が強くなりすぎ、血圧が高くなったり腎臓が悪くなったりといったゆく作用が現れやすくなる。定期的な腎機能のチェックが必要。またある種の降圧剤と併用すると歯肉肥厚が起こることがある。またネオーラルは抵抗力を弱める作用があり、風邪などで弱っているときには控えた方が良い場合もある。
Q 乾癬に良い食品、悪い食品はあるか?
A 昔は青魚が良いと言われた。また欧米型の食事(肉食、豚の脂身等)が悪いと言われた。乾癬患者のうち40%以上はメタボであり食べ物の影響は否定できない。ただ食べ物との関係性は証明されていない。
Q 睡眠中にかゆくて掻いてしまうが、手袋等はしたくない。良い方法は?
A かゆみ止めを服用するか、寝る直前に薬を塗る。
Q 尋常性乾癬から関節性乾癬に移行するか?
A 大いにある。突然関節症乾癬になる事は少ない。関節性乾癬のうち7~8割は尋常性乾癬から移行する。(ただし乾癬登録患者のうち関節症性乾癬患者は2007年度新規登録症例で4.1%と多くはない。)進行すると関節が曲がる事もある。これに対しては生物学的製剤が良く効く。
Q 乾癬は遺伝するか?
A 乾癬になり易い遺伝子があることは分かっている。しかし遺伝するとは限らず、親子・兄弟に患者がいた場合は5%位遺伝するようだ。乾癬を発症する人は20歳~40歳位が多く、遺伝なら赤ちゃんから発症している。ケガ、大病、感染等が引き金になる。
Q 夫婦で乾癬だが、同じ生活をしているとうつるのか?
A 乾癬は人にうつることはない。偶然だと考えられる。ただ子供にも発症する可能性は高い。
Q 薬代を節約するために、ステロイドをワセリンに混ぜて塗っているが?
A どういう混ぜ方かにもよるが、混ぜ方によって薬の安定性がかわり、作用がゼロになる事もある。主治医によく相談して欲しい。
Q 乾癬で社会的差別があれば、友の会へ言ってもよいか?
A 仕事を解雇されたりすれば問題だが、友の会に言ってくる事案ではない。個々の事例として考えるべきである。しかし患者会の活発な活動により10年前と比べても社会的な認知度は上がっており、皮膚病として理解され始めている。
Q 塗り薬の効き目が悪い場合、替えても良いか?
A 薬の塗り方についても医師によく相談して欲しい。医師は一日に2回塗る前提で薬を出している。夜しか塗れない、などの場合は少し強い薬にした方が良い場合もある。また塗り薬以外、飲み薬や光線療法を併用すれば治療効果が上がる場合がある。いずれにしても担当医とよく相談して欲しい。
Q 完治した人はいますか?
A 完治した人は通院しなくなるので、どのくらい良くなっているのか正確には把握できない。ただ長期間良くない症状であったのに、何年間も症状が出なくなった人がいる、という話は聞いたことがある。
Q 扁桃腺と乾癬の関係は?
A 扁桃腺か腫れた後、小さな滴状乾癬ができることがある。これは扁桃腺が、ばい菌の巣になり易く、乾癬の引き金になっているからである。全身麻酔になりある程度の覚悟は必要だが手術で扁桃腺を取れば乾癬が良くなることがあり、手術をやってみる価値はある。ただし100%治る訳ではない。

3.懇親会
参加 佐野教授、樽谷准教授、中島講師
会員及び家族13名